もしもあの時②

わたしは小さい頃から、結婚はしなくていい、いやしたくないと思っていました。子どもも好きではなかったし、他人と仲良く暮らす自分を全く想像できなかったのです。自分が恋愛する姿、そして家庭を築く姿を温かくほほえましい思いで描くことができなかったのです。身近に羨ましくなるようなお手本がなかったせいなんでしょうかね。一人のほうが絶対気楽なのにと思っていたのです。

そんなわたしは、できれば結婚せずに自分のペースで過ごし、稼いだお金を自分と家族のために使えばいいと思っていました。その思いを共有できる人となら共同生活をしてもいいけれど、そんな人はいないよなあと思い、その気持ちは家族にさえも語らずにいたのです。なのに…心許した同僚についつい口が滑って独身主義だと言ってしまいました。同僚に「今時離婚も珍しくないし、してみればいいのに。」と言われました。ちょうど子どもはいたら楽しいだろうななんて思い始めたころで、職業柄未婚で生むのはハードルも高く、結婚するのも悪くないかもと思い始め、ちょうど付き合っていた主人と結婚したのです。まさに戦略的結婚です(笑)。

もしもあの時、口を滑らせていなかったら、今頃私は独身貴族で、母と旅行三昧だったかなあ。教頭とか校長とか目指していたんだろうか?少なくとも大学院の後期課程は行ってただろうなあ。

でも、今みたいにマイペースののんびり人間にはなってなかっただろうなあと思います。きっとカリカリしたとっつきにくい内向的な昔のわたしのまんまだろうなあと。結婚し、子どもを育てたことで、思うようにならないことも、くじけそうな事件も何んとなーく過ごせてきました。周囲の助けを借りなければとても過ごせなかった日々、昔のわたしだったら人の助けを借りるなんて、弱音を吐くなんて考えられなかったですから…。