春の選抜高校野球が中止になって思い出したこと

 以前書いたことがあるけれど、私は高校野球が大好きで、スコアブックをつけながらラジオ片手にテレビの実況を1日中聞いていた。亡くなった父と大きな紙に組み合わせ表を書いて家の真ん中に貼って、父と試合の講評をし、予想をし、ある時は涙しながら見ていました。

 そんな私は、教員になり6年目に地元の強豪校に勤務することになりました。尊敬する名将とお話しすることや、応援団の担当になること、アルプス席で校歌を歌うことを夢見て赴任したものです。

 異動後の夏は逃したものの、秋の大会を制し、春の選抜はほぼ確実と言われた矢先、阪神淡路大震災が起きました。テレビに映し出される惨状に、とても高校野球をやってくださいとは言えなかったものです。それでも、選手たちの近くで日々の努力を見てきたので、心の中では「何でもするのでやらせてください。」と願っていました。程なく選抜に出場することが決まり、感謝の気持ちでいっぱいだったことを思い出しました。

 もしかしたら、幻の代表になるのか、場所を変えて実施されるのかと気をもみましたが、瓦礫の横を、一般道を使って行った甲子園を私は一生忘れないと思います。実施されたのは本当に夢のようでした。

 今回中止になり、救済措置なんかもネットを賑わせていますが、球児たちの気持ちはどうなんでしょう。あの時、教え子たちは、「甲子園でやりたい。でも、中止なら夏に頑張ります。」と言ってくれました。報道される惨状を知っているからだと思います。今回は世界中が悩まされているこの状況に、球児たちは何ていうんでしょう。