「記憶に残っている、あの日」一生忘れられない胸の痛み

はてなインターネット文学賞「記憶に残っている、あの日」

長女が小学5年生の時、校長室でわたしは土下座を受けました。夕焼けがきれいな日で、真っ赤な光が校長室に差し込んでいました。土下座で謝られている自分を俯瞰で見ている自分がいて、右の胸が「ピキッ」と音をたてました。もう以前のわたしには戻れないなあと、なぜだか強く思いました。

ブログを始めた日から、いつかはこの日の出来事を書くことがあるかなあと思っていましたが、わたしたち家族にとってあまりにも衝撃的で、忘れられない出来事なので、書くのにはそれなりの覚悟がいると思っていました。でも、今回のお題を見て、書かなきゃなって思いました。

長女はダウン症で知的障害があります。小学1年から、知的障害のクラスに所属しています。クラスは長女と途中で転校してきた男の子が1人の2人でした。

ある日、担任の先生からわたしの職場に電話がかかってきました。「できれば直接お話ししたいので、学校にいらしてください。」というただならぬ電話でした。丁度休みだった主人と一緒に学校を訪れ、聞いた話はとんでもないものでした。

同じクラスの男の子から性的ないじめを受けているという内容です。半年前、普通学級の男の子から胸を触られるという事案があってから、長女には支援員の先生がほぼべったりついている状況だったのですが、その支援員の先生がお手洗いに行っているうちに男の子がズボンを脱いで、長女に…。とても書ける内容でもないし、当時先生も口にできない様子でした。ただただ、「申し訳ありません。」と先生方が謝っていらっしゃいましたが、わたしの体は震えて、動けなくなりました。一緒に行った主人は目を真っ赤にしていました。どうやって家に帰ったか、どんな話を主人としたのか、まったく思い出せません。

翌日、男の子の母親が、土下座をされました。土下座をすれば、なかったことになるのか、それで許さなきゃいけないのか。そんなことを考える自分がとても嫌で嫌で…。これからも、一緒に過ごさなきゃいけないんだなあと思うと、長女がよくわからなくてよかったなあとか、次女じゃなくてよかったとか、もう自分の人間性がズタズタで、涙も出ないし、そんな時、胸がピキッて音を立てた気がしました。もう何もなかった自分には戻れないなあと。

今でもきれいな夕焼けを見るとあの時の土下座が思い出されて、せつない気持ちがします。被害にあった当事者じゃないとわからない痛みです。そして、誰にも味わってほしくない痛みです。