修正液をこぼした話

今週のお題「こぼしたもの」

人並みに食べ物こぼしたり飲み物こぼしたりはしますが、まあ人並み。何かこぼしたもの…。と考えていたら、忘れちゃいけないこぼした事件がありました。

教師になって2年目。わたし自身が大学に推薦入試で合格したので、先輩の先生から同じ大学を受験する生徒の指導を任されました。部活でも指導していたとても優秀な生徒でした。入学したときはそれほど学習に意欲的ではなくて、ただ、ゲームやパソコンが好きなおとなしい生徒だったのですが、簿記がとてつもなく得意で、指導するわたしが泣きそうでした。

高校に入学し、勉強のおもしろさが分かったと言ってくれた初めての、そして忘れられないかわいい教え子でした。必ずわたしの後輩にしたい!と若かったわたしは張り切りました。ただ、彼は作文がとてつもなく苦手で、文字がとてつもなく個性的で…。でも、毎日厳しく指導するわたしにしっかりついてきてくれました。

合格発表を10時に控えたその日の朝、そわそわしていたであろうわたしは、当時瓶に入っていた修正液を床にぶちまけてしまいました。着ていたわたしの服は真っ白…。でも、それよりも縁起でもないなあという気持ちがわたしの中にあふれていました。

結果は、不合格でした。あんなに優秀な生徒を合格させてあげられなかった。わたしの責任だと、ふがいなさでいっぱいでした。先輩や同僚にどんなに慰められても、彼に申し訳なくて、わたしの心は泣き叫んでいました。

結果を彼に告げたとき、「わたしの力が足りなかったよ。ごめんね。」といったわたしに、彼は「高校で勉強が楽しいと思えた。推薦の勉強だって楽しかった。先生ありがとう。」と言ってくれました。その後彼は全額奨学生で専門学校に行きました。わたしは転勤してしまったので彼のその後はわからないのですが、元気に頑張ってくれているといいなあと思います。

今でも、修正液で真っ白になった床と、わたしのスカートを時々思い出します。あーーあって。